本日の日経産業新聞24面の記事の紹介です。
「仕事人秘録」神鋼電機会長佐伯弘文氏の記事で、「食堂やトイレをきれいにすることが工場改革につながり、営業の結果もついてきた」という内容です。
長文ですが、一読いただければ幸いです。
・・・神鋼電機の経営再建にあたった佐伯氏が最も重視したのが工場内の食堂とトイレだった。
食堂と トイレを徹底してきれいにすれば、社員の美的センスと工場の生産性、品質管理意識が高まると確信していたからだ。
2000年に社長になって工場を視察したときに「5S(整理・整頓・清潔・掃除・しつけ)」がまったくなっていないと痛感したことは以前に述べた。
その理由を探るために私がまず見に行ったのが食堂とトイレだ。
案の定、両方とも汚れており、5Sを追求するのは無理だと思った。
食堂とトイレは人間にとって根源的な欲求を満たす場所であり、人間の尊厳にかかわる場所でもある。
ここが汚ければ人の美的センスは失われる。整理、整頓しろといくら言われても、美的センスを失った人には何の効果もない。
また、食堂とトイレは会社の従業員への婆勢が表れる場所でもある。
工場で働く人を大事にしている会社であれば、気持ちよく働いてもらうために清潔にするはずだ。
逆に汚いまま放置していれば、「会社は自分たちを人間として扱っていない」と従業員は感じてしまう。
大学を卒業して就職した日本ガイシを私が2年でやめた理由のひとつが、社員食堂で使われていた金属製の食器だった。
従業員を大事にしようという気持ちがあるならば、犬のえさを入れるような金属製の食器ではなく、陶器を使うはずだと私は感じた。
だからこそ、食堂とトイを徹底的にきれいにしようと思ったのだが、ここでも事なかれ主義に染まった一部役員の抵抗にあう。
「今のままでも特に問題はないのでは」「それよりも給与やボーナスをあげるべきだと労働組合がクレームをつけてくる」と彼らは言い訳をする。
貧すれば鈍すとはまさにこのことで、私は情けなく思った。
それでも気を取り直して全工場のすべての食堂とトイレを100カ所近く見て回り、どう直すべきかを指示した。
積もりに積もった汚れを取り去り、古くなった便器は入れ替えた。
食堂もすべて改装し、テーブルにはクロスをかけて、花を飾るように言った食堂とトイレがきれいになると、工場で働く従業員の士気が上がった。
佐伯氏が推奨する工場改革運動も成果を上げるようになった。
従業員は会社や経営陣への不信感を募らせていたのだと思う。
7年連続の赤字で何をやってもだめだというあきらめ、汚いまま放置された食堂とトイレに象徴される会社の従業員への姿勢。
これでやる気を出せというのは無理な相談だ。
食堂とトイレをすべてきれいにするために四億から五億円かかったが、そんなことはまったく問題にならなかった。
「今度の社長は自分たちをきちんと扱ってくれる」と従業員は喜んでくれた。彼らが美的センスを取り戻してくれたこと、5Sの考え方も徐々に浸透していった。
工場改革運動に直接つなげるつもりはなかったが、従業員から改善提案が続々と出てくるようになった。
もともと能力のレベルが低い人たちではない。
きっかけを与えてその気にさせれば、工場が抱える様々な問題に気づき、その改善策を考えられるだけの力は持っていたのだ。
工場がきれいになったことは営業にもよい影響を与えた。
取引先の方を工場見学に招いたところ、「これだけ清潔な工場なら製品の質も高いに違いない」と感じてもらえるようになったのだ。
ここまでくればしめたものだ。
私も会社が復活に向けて動き出した手ごたえを感じるようになった・・・
従業員から改善提案が出てきたり、工場見学に来られた方がこれだけ清潔な工場なら製品の質も高いに違いないと感じてくれたことは、最大の成果と言っても過言ではないのでは。
当事務所も年末に向けて大清掃と整理整頓を徹底する計画です。
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